【書評】アンガーマネジメント
書評
アンガーマネジメント 戸田久美【著】
要約
①アンガーマネジメントとは怒りと上手に付き合うための心理トレーニング。怒りは自身が生み出した感情であり、コントロール可能である。
②心理的安全性(自己理解・自己開示・自己表現)が自分らしく働けることに繋がる。
③怒りの矛先は固定されず身近かつ下の立場に向かいがちで、周囲伝染する。
④怒りはコアビリーフ(~べき)が破られたときに生じ、第一次感情(不安・悲しみなど)の次にくる。
⑤怒り対処法→100から6秒引き数える、怒りを数値化(10点方式)、心落ち着く言葉を唱える、情報遮断(ストップ)、深呼吸、今ここに集中(マインドフルネス)、語彙力を増やす
⑥怒り体質改善→分析せず即記録(日・場・内容・感想・数値)、解決思考記録(コントロール可否、重要有無の4分類)・~べき記録・成功体験記録・悪循環断ち切り(普段の叱り方を書き見直す・ルーティーンを一部変更)
⑦コアビリーフ(~べき)を記録し①許せる②まぁ許せる③許せないゾーンに境界を分け、①②を増やす努力をしつつ、境界線を言葉で伝えるようにする。
⑧怒りをリクエスト(事実+要望あるいは要望+理由)に変換し相手に伝える。
⑨相手の怒りに対して→「べき」否定せず1次感情共感。コントロールできない、重要ではない場合「異文化コミュ」と割り切りスルーする。
⑩相手に伝わるか、響くかは日頃の信頼関係に大きく左右される。
所感
怒りの構造から対処法、現場の事例集まで簡潔に網羅された良書。感情のなかで最も厄介である「怒り」に対して、具体的かつ、すぐさま実践可能なテクニックを紹介されていることが何よりありがたい。ただし企業サラリーマンに向けた記述が多いため、生活全般の対処を求めて手に取った方は参考にしにくい事例が多いように感じた。各章の振り分けに曖昧さを覚えた箇所もある(対処法と体質改善の差異など)。また、本書に「価値観の多様化で常識がない職場に」「2~3年違うと、もう価値観が違う」と文言があるように、本書刊行がパンデミック直後であることを考えると、それから数年、歴史的に類を見ない速度でリモートワークが一般化した今、早急に専用の対処事例追加が求められる状況にあるのではないだろうか、とも。あれこれとつい批判めいてしまったものの、怒りの対処事例は、マネジメント層に響くであろうリアルの声を拾ったものが目白押しなので、ぜひ40代、50代ビジネスマンは一度手に取って読んでほしい。実践すれば、着実に環境が良好化するに違いない。私も日ごろの生活に本書から学んだテクニックを試していきたい。
作者への質問
ない