kokoro-zの日記

心のうちを曝け出す。

【書評】365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘 秋元里奈

365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘 秋元里奈

 

要約

産直ECサービス「食べチョク」を経営する秋元里奈氏の生い立ちから起業、現在までのストーリーが綴られている。幼少期は引っ込み思案だったが、自らを変えるために挑戦を続けることで徐々にコンプレックスを解消していく。負けず嫌いな性格ゆえ衝突も避けられなかったが、持ち前の素直さでまわりに支えられながら成長する。努力の甲斐もあって名門に進学、一流企業への就職と確かなステップを歩むなか、ふと帰省時に実家の荒れ果てた農業畑を目の当たりにし、強いショックを受ける。これを機に、こだわりの野菜が売れずに苦しむ農家を支えたい一心で起業。退路を断つために退職し、独り経営の状態から前へ突き進む。泥臭く全国の農家を訪問し、生の声を聴きながら取り入れる姿勢に、まわりは次第にこころ動かされていく。当初は売上が振るわず悪戦苦闘の日々だったが、農家ファーストを信念に行動し続け、ユニフォームをTシャツに代えたところ話題沸騰。今や社員は40名、年間6億円を調達するまでに拡大。誠実と情熱をまとい、躍進する起業家の軌跡とこれからに目が離せない。後半はQ&A、巻末には生産者、購入者、社員の声掲載。

 

格言項目

①やりたいことを見つけるには普段合わないような人に自己開示し、アドバイスは自分に合うかどうか取捨選択すること

コーチングやマネジメント経験ある人に壁打ち(自分の感情を吐露)することで自分の輪郭がはっきりしてくる

③他者の意見に惑わされないために、相手の「肩書き立場」と「意見」を切り話し考える

④起業が怖い場合は、週末起業から始めて、適時不安になることを書き出していく

⑤「笑われたとしても夢を話すことが私のすべきこと」という意識で前へすすむ。

⑥「なるべく人を傷つけない」、「嘘をつかない」ことが大事で、自分の信念ややりたいことを言葉にして言い続ける

⑦人脈づくりに躍起にならず、まずは目の前の人を大事にすること。

⑧年中、Tシャツを着ているのは生産者に寄り添う覚悟のしるしで、結果的に注目を浴びる相乗効果を得られた

⑨事業の成否自体は、①やる人②戦略③タイミングが決める

⑩大多数に伝わらないことを前提とし、自分を諦めず発信し続けることが大事。

 

所感

絵に描いたような成功ストーリーが綴られているが、嫌味が一切ないためか、すんなり内容が入ってくる。流れるような文章に自頭の良さだけではなく、嘘偽りない情熱を感じ取れる。成功には著者自身が述べているようにタイミングが重なった部分があると思うが、核となるのはやはり彼女の人柄であろう。農家を支えたいという純粋な思いがまずあって、そこから湧き出る情熱的な行動が話題を呼び、周りの信頼を得ることに繋がったに違いない。一抹の不安があるとすれば、勇往邁進するあまり休息を怠ってしまうことだ。心は燃え盛っていても、身体が追いつかなくなるときがいつかきてしまうので無理しすぎないでもらいたい。とすでに彼女のファンになってしまっている。私も熱を伝搬してもらった気持ちで、真摯に前へ突き進みたい所存である。

 

質問(要望)

「農薬や化学肥料を使用している場合は、散布のタイミングやどんな薬品を使っているかを開示できるかがポイント」とあることについて。

消費者が実際に気にかける点であることは確か。しかしこの文言は化学肥料に限定せず「肥料」とするのが適切でありませんか。この文章では有機肥料が安全で化学肥料は安全面に考慮する必要があると捉えられてしまいます。実際は有機だろうが化学だろうが肥料の効くスピードによって散布量、散布タイミングが重要であることに違いはないでしょう。有機を根拠なく持ち上げ、慣行を暗に落とすような文言は生産者、消費者双方に不誠実だと思います。